和水町の幸せな猫たち

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作品を公開しました。作り方と企画された経緯をご紹介します。

この動画に込めた想い(目的)

この動画は、初代「しん」と「かん」への供養と、懺悔の気持ちから生まれました。そして、この動画を通して、私たちが暮らす和水町の野良猫たちが置かれている現状について、少しでも考えるきっかけを届けたいと思っています。また、動画制作を通して想いを形にすることの事例として、ご覧いただければ幸いです。

▼この動画が目指していないこと

  • 猫による観光客の誘致
  • 猫の幸せや不幸の定義付け
  • 視聴回数を稼ぐこと

STEP1 材料集め

まず、伝えたい想いを台本に書き出し、そこから映像で表現できる形に絞り込んでいきました。※書き上げるまで30分ほど。

今回のテーマ「和水町の猫環境を伝える」ためには、多くの猫と町の風景が必要でした。ストック映像だけでは足りず、数日間かけて町内を歩き、様々な環境で暮らす猫たちの姿を撮影しました。人に慣れた猫、少し離れた場所から餌をもらう猫、懸命に自然の中で生きる猫。首輪付きなど飼い猫と明確に分かる場合は除き、ありのままの姿を記録しています。(動画では一日の出来事のように見せていますが、実際は時間をかけた観察の記録です)
また、以前からの撮影分のデータも再度確認し、フォルダ分けやタグ付けを行い検索しやすく準備をします。

オープニング映像の撮影を行います。
音声はワイヤレスマイクを使用しています。あんまりアップの映像では絵的に美しくないと思い引きの映像にしましたが、ワイヤレスで鮮明な音声を収録しました。以後は、アフレコになります。高音質なマイクを使用しました。道路沿いのスタジオで収録しましたので、車の走行音などが入っていましたが調整などを行いましたので、気にならないと思います。
アフレコは何度か取り直した箇所もありますが、基本的に舌足らずな音声でもOKとしています。ハキハキ喋るのがベストとも思えなかったので「素人感」が抜けないようにしました。伝え方が業務的になってはいけないからです。

素材は常に持ち歩いているスマートフォンを主に使用しています。撮影時は1920×1080ピクセルの高画質、60fpsの高レートで撮影していますので動きの速い対象にも耐えられますが、出力の段階で半分のレートにダウンさせています。一部の昔に撮影した素材に合わせています。

※今回の素材集めは数日~数年

STEP2 構成

動画の見た目や展開をどうするかを考えます。今回の動画の目的として「和水町の猫環境の考える」とある通り、見て欲しいのは和水町在住の方です。また、動画の作成を請け負う仕事として顧客域も合致しています。猫動画として公開した方が一般的には視聴回数は望めますが、目的があり町民向けですので今後も考え製作者本人がまず出演することにしました。その後に続くナレーションもどんな人物が喋っているか伝える必要があった為です。
一番大切な動画の冒頭からおっさんが登場することによって多くの人を脱落させます。かろうじて犬のあんちゃんと猫がこれから紹介されるとの前振りから続けて見られる人もあるかもしれませんが、以後ただただ悲しいシーンが続いてしまいます。

台本をAIに見てもらい評価を貰います。
「とってもいいね!熱量感じます。かんちゃんパートの前にポエムがありますが、メッセージは最後にまとめると伝わりやすいかも!」と言われたので、「説教したいわけじゃないんだ」と反論。しばらくAIと言い合いをし最終的にAIの意見を却下しこだわり見せつけます。

音楽は最初から用意せず編集を行いました。映像を先に決定して全体像を把握しておきたかったのもあります。追加撮影の有無を判断します。※並べ終えるまで3時間ほど。

シーン内で、過去の話パートの画像を考えます。今回のテーマ的に派手な演出は邪魔でした。よって画面が黒一色などが頻繁に出てきます。しゃべりが映像に負ける・引っ張られるのが嫌だったのもあり、暗闇での演技や、ただ夜の道を歩き白線がちょっと見える…などを採用しました。

登場するのは、和水町の猫たち。映像は全て和水町の風景です。
と、言いたいところですが場面転換、二代目しんの話をするときの川にいる鳥の群れの映像は隣町です。時間が進んだ事と、違った映像を見せたかった事から採用しました。鳥・川→歩くあんちゃん→穴掘りとあんのお尻と映像が続きます。二代目しんと出会ったのは夏ですが、冬の映像ですね。今回風景も多く撮影しましたが、使う場面がありませんでした。あんの移動シーンで十分と考えました。特に伝えたかったのは、3匹の猫の「食」をめぐる対比です。

  • 初代しん: 食べたものを吐き出し、ミルクも拒絶する姿。
  • 二代目しん: 保護後の旺盛な食欲。
  • かんちゃん: 食べられない姿と、私の「食べてくれ」という願い。

この対比を通して、命の現実を伝えたいと考えました。また、タイトルは「和水町の猫の幸せとは?」としたい所を、「和水町の幸せな猫たち」としました。「幸せなのか?」と少しでも考えてもらえたら嬉しいです。

STEP3 編集

動画全体は、テーマに合わせて静かで落ち着いたトーンで統一しています。派手な演出は避け、シーンの切り替えには「暗転」を多用し、視聴者が言葉と映像に集中できるように工夫しました。BGMもひかえめにしています。猫たちの映像は、ただ可愛さをアピールするのではなく、物語の途中に挟み込むことで、彼らがこの町の風景の一部であることを示しています。
せめて最後は…と、あんちゃんと招き猫のツーショットで終わってもらいました。
この招き猫は、大雨の後、川岸に流れ着いていたものを釣り人が拾い上げ置いていたもの。気付いた日には素通りし、翌日の散歩中に撮影したものです。今回のために招き猫は流れ着いたのかもしれません。猫は本来、幸せな気持ちにさせてくれる存在でるとのメッセージで動画は終わります。

動画時間は9分を超え、一般的な視聴維持率を考えれば長いかもしれません。しかし、前後編に分けて視聴者の興味を煽るような手法は、このテーマにはそぐわないと判断しました。多少長くなっても、一本の動画としてメッセージを届け切ることを最優先した結果です。
※編集が終わるまで4時間ほど。

STEP4 公開

Youtubeのみに公開します。Youtubeには字幕機能があり、日本以外での視聴を望むには字幕が必須となります。字幕表示ボタンに気づかない方が多いだろうとの考えから直接字幕を動画に加えました。サムネイルは、単なる猫動画ではないことが伝わるよう、テーマ性を意識して作成しました。。

STEP5 動画について

多くの動画は「人気だから」「ニーズがあるから」見られます。しかし、本当に伝えたいことがある場合、必ずしもその方程式が当てはまるとは限りません。今回の動画は、不特定多数の最大公約数に向けたものではありません。しかし、「誰に、何を伝えたいか」という芯を込めて作りました。こうした想いは、時間がかかったとしても、必ず届くと信じています。ヒット作は狙って作るものではなく、結果としてそうなるもの。まずは、自分たちが信じる作品を誠実に作り上げることが全てだと考えています。

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身体を登る「かん」ちゃんと作者